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隠れたIT大国 ウクライナの実像に迫る!第八回  ウクライナの驚くべきIT教育 柴田裕史


昨日Kiev School of Economics(KSE)というキエフ市内の大学主催のAIセミナーに行ってきました。カナダのトロント大学からAI専門の講師を招いての本格的な授業形式のセミナーで筆者の留学時代の授業を思い出しました。もちろんプレゼン後の質疑応答もすべて英語で行われ、皆積極的に質問していました。日本ならきっとこういう場ではしーん、としてしまうんだろうな~と思いました。


KSEでは通常のMBAの他、Master of Business and Artificial Intelligence(MBAI)という修士プログラムを用意しているそうで仕事と両立しながら週2~3日間みっちりビジネスとAIの技術の両方を学べるプログラムです。そのカリキュラム内容もなんとディープラーニングを利用して作られており、最も需要の高い技術、知識、ソフトスキルなどを身につけることが出来る実践的な内容になっているようです。内容を詳しく見る限りこれはすぐに即戦力として企業で応用できるだろうことが良くわかりました。何せ世界中から実務経験豊富な講師を招き、すべて英語で講義するというのが非常に画期的だと思いました。同様のコースはウクライナ国内ではリヴィウのUkrainian Catholic UniversityがAI技術に特化したプログラムを提供しているようです。しかしKSEのプログラムはビジネスのカリキュラムを織り交ぜ、より実践的な内容となっています。なにせ授業料が英語圏の大学と比べ5分の1程度というのが魅力です。生活費なども合わせるとかなり安く、世界最先端の知識がここウクライナの地で学習できてしまうというメリットがあります。これは日本人もぜひ検討の余地があると思いました。



KSEのAIセミナーの様子
KSEのAIセミナーの様子


ウクライナでは日本のように大学はモラトリアムではなく、血反吐が出るような厳しい試験に幾つも合格しないと卒業は出来ません。よって学生はいつも膨大な課題やリーディングをこなすことになります。これはウクライナだけではなく、欧米の大学なら当たり前なのですが旧ソ連の大学はそれに輪をかけ難しい気がします。例えば嫁(修士持ち)に聞いた話なのですがカンニングが絶対に出来ない1対1で教授の質問に次々答えていくことを要求される恐怖の口頭試験というものがあるそうです。このためウクライナの大卒者の知識量は英語圏の大学新卒者と比べても格段に高いです。


またキエフにはソ連時代の工場をリノベーションした敷地面積25ヘクタール(75000坪以上)の大規模なIT総合集積都市とも呼べるUnitCityが存在し、約3000名の学生がIT技術を学んでいます。UnitCityはオフィススペース、コワーキング、スタートアップ支援・インキュベーション、セミナー、コンファレンス、IT関係者向け居住区画などまさに「都市の中の都市」といっても良い巨大施設となっています。去る今年2月に筆者が社外顧問をしている日本のIT企業の担当者さんがウクライナへ視察に来た際、親日のUnitCity社長のコンスタンチンさん直々に施設ツアーをしていただきました。そのビジョンの壮大さに完全に圧倒されました。ウクライナ人向けに格安の授業料で教育を提供する代わりに卒業後は施設内の企業で一定期間働くこと、ウクライナ国内で働くことなどを条件づけています。筆者が非常に驚いたのはこの巨大ITパークが政府のイニシアチブで作られたものではなく、ウクライナのオリガルヒ(新興財閥)によってファンディングされていることでした。UnitCityはウクライナのIT業界の未来に貢献したいというスポンサーのビジョンを反映した施設と言えます。ウクライナではIT業界は政府の援助なしに自分たちで発展させてきたという自負があり、政府ががんがん介入してIT業界を全面的に支援している隣国ベラルーシ、電子政府を目指しているエストニア、政府がすべてをコントロールする中国などとはまた違う熱気を感じます。



UnitCity内部の教育施設の様子
UnitCity内部の教育施設の様子


日本人の学生、新卒、そしてエンジニアがウクライナに来て、もしこのような教育、トレーニングを受けたらグローバルで勝負できるエンジニアへと変身することができるでしょう。日本人エンジニアの弱点として英語でのコミュニケーション力、最新AI技術の理解と学習、そしてグローバルプロジェクトの進め方に不慣れという点があります。逆に言うとこれらを克服することが出来れば日本人エンジニアは世界に羽ばたくことが出来るでしょう。シリコンバレーのデータサイエンティストは他国より平均30%多く給与をもらっているという統計もあり、給与の面でも日本と世界の幅はますます広がっています。中間搾取を避けるためにもUpWorkなどのプラットフォームで直にシリコンバレーから仕事を取ってくる個人エンジニアも近年では日本では増えつつあります。日本人エンジニアは多重下請けの犠牲となっている例が非常に多く、これを避けるためにも是非上記のスキルを身につけるべきだと思います。


筆者のAgo-ra IT ConsultingではウクライナIT留学にご興味のある個人、企業様を全面的に支援していますので是非是非ご連絡ください。




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